ながら歩き(コグニウォーク)のススメ【コグニサイズって、知ってる?】
コグニサイズは、国立長寿医療研究センターが開発した運動と認知課題を組み合わせた、認知症予防のための運動です。
コグニサイズは認知症予防に効果的です。
日本発のエビデンスですが、素晴らしいと思います。
結論:ウォーキングに飽きたら、『ながら歩き(コグニウォーク)』がお勧め
コグニサイズとは?
以下に具体的なコグニサイズの実践方法をいくつかご紹介します。
- コグニウォーク:
- 歩きながら認知課題を解くエクササイズ
- 通常よりも大股で歩きながら、しりとりや計算などの課題を行う
- 複数人で行う場合が効果的
- コグニステップ:
- 数字を数えながら足を動かすエクササイズ
- 足し算や引き算などの計算をしながらステップをふむ
- コグニラダー:
- ラダー(階段状のアスレチック用具)を使って行うエクササイズ
- ラダーの各段に数字や色を書いて、足を交互に踏む際に課題を解く
- コグニボール:
- ボールを使って行うエクササイズ
- パートナーとボールを投げ合いながら、数字や単語を言い、課題を解く
- コグニダンス:
- 音楽に合わせて踊りながら、課題を解くエクササイズ
- 踊りながら数字を数えたり、言葉を言う
要するにデュアルタスク(二重課題)ですが、体を動かしながら脳トレすることがコグニサイズだと、簡単に理解してください。
コグニサイズは認知機能の維持と向上に役立つ
愛知県の国立長寿医療研究センターで、軽度認知障害のある方を集めてコグニサイズを実施したところ、1年後には記憶力が改善し海馬の萎縮も改善したのです。
この研究で、運動と脳トレを同時に行うと認知機能が改善することが証明されました。
まとめ
筆者は、認知症予防にウォーキングを推奨しています。
しっかりしたエビデンスがあるコグニウォーク(ながら歩き)は、心身ともに健康になり、認知症予防にもなるウォーキングです。
ウォーキングに飽きたら、コグニウォークにチャレンジしてみませんか?
鼻歌ウォーキングのススメ【軽度認知障害に対する音楽療法の効果】
歌うことでリラックスしながら脳が活性化される。
鼻歌ウォーキングは手軽にできる音楽療法です。
結論:音楽療法は認知症を遠ざけるが、鼻歌ウォーキングはダブル(音楽療法+ウォーキング)で認知症予防になる
軽度認知障害に対する音楽療法の効果
失われた発語を復活
- 音楽療法を継続することで、徐々に左脳の機能の回復を図ることができる
認知症患者の周辺症状(BPSD)を改善
- 音楽を聴いたり歌ったりすることで脳の血流が増し、脳が活性化する
- 不安やうつ症状が改善する
- 過去に親しんだ音楽を聴くことで当時を思い出し、記憶力が改善する
高血圧の改善効果
- 音楽療法が高血圧にも効果があるというデータがある
- 高血圧を予防することは、認知症を予防することにつながる
日常生活動作の改善
- 能動的音楽療法を通じ、歌ったり楽器を演奏したりすることで、ADL(日常生活動作)が向上する
効果的な鼻歌ウォーキングをするために
鼻歌よりは、大きな声で歌いながらウォーキングする方が効果的です。
腹式呼吸をしながら、上半身の筋肉を動員して、しっかり腕振りながらウォーキングする。
かなりの運動量になるはずです。
まとめ
とはいえ、大きな声で歌いながらウォーキングする勇気、ありますか?
でも子供と手を繋ぎながらのお散歩ならできるのでは?
そんな機会があったら、ぜひトライしてみてください。
自分は子供がまだ小さかった時は、一緒に歌いながら散歩していました。
来年は孫と一緒に、大きな声で歌いながらウォーキングしたいと思っています。
スクエアステップエクササイズ(SSE)のススメ【肘ひきウォーキングで肩甲骨はがし】
筆者が最後に務めた有料老人ホームで実施されていたのが、スクエアステップエクササイズです。
SSEと略して呼ばれることがありますが、この運動の良いところは、腕振り&肘引き動作が取り入れられているところです。
筆者はスクエアステップエクササイズ指導員です。
今回は指導員の立場から、その素晴らしさについて語ります。
結論1:歩き方の基本は肘引きウォーキング
結論2:後ろに肘を引くことを意識すると、肩関節と肩甲骨が動き出す
スクエアステップエクササイズ(SSE)とは?
スクエアステップエクササイズは、科学的エビデンスに基づいたエクササイズで、頭と体を同時に鍛えることができます。
特に腕を引いて動作するので、肩甲骨の可動域が広がります。
- スクエアステップとは?
- スクエアステップは、25 cm四方の枠で区切られた1m×2.5 mの専用マット上で行うエクササイズです
- 指導者が正しいステップパターンを示し、参加者はそれをまねて前進・後退・左右・斜め方向にステップします
- エクササイズ方法:
- 一辺25cmの正方形を横4個、縦10個の計40個並べたマットを使用します
- 指導者のステップをまねて進み、100種類以上のステップパターンを練習します
- 効果:
- 認知症予防や体力づくりに効果があります
- 高齢者の介護化予防にも役立ちます
- 肘を引いて動作することにより、肩甲骨の可動域が広がり、体幹が鍛えられます
スクエアステップは、歩く脳トレとも呼ばれています。
ウォーキングのポイントは『どれだけ肘が引けているか』
歩き姿にその人の体の若さが現れます。
その象徴が腕の振り(どれだけ肘を引いて歩いているか)です。
いくら前に振れていても、後ろに引けていないと肩甲骨周りの可動域は広がらないですし、当然ですが運動効果の高いウォーキングにはならないです。
若いハツラツとしたウォーキングをされている方は、必ず肘が後ろに引けています。
すなわち、健康骨が動いています。
肩甲骨は加齢とともに硬くなり、意識して動かさなければ、年を重ねるにつれてどんどん可動域が狭くなっていきます。
「ウォーキングは腕振りが重要です。腕を振りましょう」
そう話すと、前に大きく振る方が多いですが、それは間違った腕振りです。
正しい腕振りは、肘を大きく後ろに引いて歩きます。
肩甲骨はがしとは?
最近、『肩甲骨はがし』って聞いたことありませんか?
肩甲骨の周りが硬くなると血行が悪くなり、肩こりや姿勢の悪化につながると、最近注目されています。
「肩甲骨から老化する」
といわれるほど、全身の中でも老化が現れやすい部分です。
『肩甲骨はがし』とは、肩甲骨の周りをストレッチするということ。
SSEで肘を引くことを意識することで、肩甲骨が徐々にはがれていきます。
肘を後ろに引くと、自然と姿勢も良くなります。
ウォーキング中に意識して肘を引いて歩くことでも効果はあります。
思いっきり肘を引いてウォーキングして肩の可動域を広げましょう!
ポールウォーキングのススメ【認知症予防・転倒予防効果が高いディフェンシブスタイル】
筆者が務めていた有料老人ホームでの話です。
認知症予防・介護予防チームのプロジェクトリーダーとして筆者が導入したのがポールウォーキングです。
入居者の中には
「ポールウォーキングで5センチも背が伸びた」
と喜んでいらっしゃる方もいました。
ポールウォーキングには姿勢改善の効果があり、実施により姿勢が改善され、結果として背が伸びます。
ポールウォーキングの良いところは、メタボ対策はもちろん、フレイル対策にもなり、極めて高い認知症予防効果が期待されることです。
筆者は日本ポールウォーキング協会認定マスターコーチプロです。
今回はマスターコーチプロの立場から、その素晴らしさについて語ります。
結論1:ポールを使うことで上半身の筋肉も動員し、全身の筋肉の90パーセントを稼働する全身運動になる
結論2:歩幅が拡がることで、認知症予防効果が期待できる
ポールウォーキングって何?
- フレイル予防への効果:
- 足腰の負担を軽減し、転倒防止に役立つ
- 正しい姿勢を保つことで安全な運動ができる
- 3か月間の実践で脚筋力が約1.2倍にアップすることも報告されている
- メタボ対策への効果:
- 全身の筋肉の90%を使う運動で、通常のウォーキングよりも平均して約8~15%もエネルギー消費量が上がる
- 正しい姿勢を保ちながら歩くことで、ダイエット効果も期待できる
- 認知症予防への効果:
- 歩幅が広がり、認知症予防になる。
- ポールを持つだけで安心感が増し、不安感が軽減されるため、高齢者に特におすすめ
- その他の効果:
- 血液循環の改善や消化器官の増強、免疫機能の向上も期待できる
- 快感ホルモンの分泌を促し、精神的な緊張や抑うつを軽減し、前向きな感情を高める
専用ポールを持たなければいけない、両手にポールを持って歩けるスペースが必要、という点ではウォーキングより手軽さは劣ります。
しかし
「もっと全身を使って歩きたい」
「もっと効果的なウォーキングがしたい」
「認知症予防に効果的なウォーキングがしたい」
という方にはお勧めのウォーキングスタイルです。
ノルディックウォーキングとの違い
- 歩き方の違い:
- ポールウォーキング: ポールは踵の近くに置く「ディフェンシブスタイル」で足腰への負担を軽減し、正しい姿勢を保つ
- ノルディックウォーキング: ポールを体の後方に押し出しながら歩く「アグレッシブスタイル」で、速く歩ける
- 効果の違い:
- ポールウォーキング: 気軽に運動したい人や始めたばかりの人向けで、フレイル予防や認知症予防に効果あり
- ノルディックウォーキング: カロリー消費が高く、本格的なスポーツ志向
筆者のお勧めは、やはりポールウォーキングです。
「ポールウォーキングのマスターコーチプロだから、ポールウォーキングを勧めてるのね」
と思うかもしれませんが、違います。
忖度しないで執筆します。
今までノルディックウォーキングで鍛錬してきた方以外は、ポールウォーキングから始めた方がいいと思っています。
少なくともシニアは、転倒しないことが重要です。
シニアには、ノルディックより転倒予防に効果のあるポールウォーキングの方が向いています。
「しんどい」を自覚してからの歩き方【歩くことを絶対に諦めないで!】
要支援や要介護になったら足腰が弱まる一方だと思っている方が多いのですが、それは誤解です。
何かのきっかけで足腰が弱まっても、諦めないでください。
埼玉県の和光市では、要支援になった方の4割が自立に戻っているのです。
要支援や要介護認定を受けても、卒業することを目指してほしい。
結論1:SSE(スクエアステップエクササイズ)やポールウォーキングは、室内でも歩くことができる
結論2:例え歩けなくなっても、SSEで足だけ動かす、座った状態でラジオ体操を実施するなど、運動を習慣化して足を動かすことを諦めない
足腰が弱まっても、歩くことを諦めないで!
歩くことを諦めれば脳を使わなくなり、認知機能の低下に繋がります。
入院をきっかけに要介護になる方は多いのですが、原因は安静にしすぎるからです。
入院生活を一週間も続けると、一週間後には
「すっかり筋肉が衰えて、歩けなくなって車椅子で退院。認知機能も落ちてしまって、入院した理由も事実と違う話をする」
という話は、よく聞く話です。
でも入院によって落ちた筋肉や認知レベルは、その後のトレーニングで回復しやすいので、歩くことを諦めないでほしいのです。
SSE(スクエアステップエクササイズ)
ポールウォーキング
ラジオ体操
歩くことを意識して、引き返せるように打ち手を施す
正直なところ、要介護4まで身体能力が落ちると、そこから自立に持っていくのは至難の業となります。
だからこそ早い段階から歩くことを意識して、引き返せるように打ち手を施す必要があります。
「なんだかしんどい」とか「フラフラする」という認識の時が分かれ道だと思います。
その時に
「このままでは歩けなくなる」
と考え、歩く習慣をつけた方は、明るい未来が待っています。
逆に
「年だから致し方ない」
と歩かなかった方は、本当に歩けなくなってしまいます。
そして認知機能がどんどん下がっていって、要支援になり、要介護認定を…と悪循環のサイクルに入っていきます。
本当に大事なことなので繰り返しますが、歩くことを諦めないでください。
打ち手はあります。
身体機能は諦めた時点から、下りのエスカレーターでどんどん下っていくようなものだと考えて、絶対に諦めてはいけません。
【参考文献】
・金哲彦『からだが変わる体幹ウォーキング』平凡社新書
・長尾和宏『認知症は歩くだけで良くなる』山と渓谷社
・長尾和宏『病気の9割は歩くだけで治る!』山と渓谷社
・大島清『脳は「歩いて」鍛えなさい』新講社
・金哲彦『確実に早くなる!体幹ランニング』講談社
・長岡智津子『体操教室35年のプロが教えるポールウォーキング』評言社
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